武士の家計簿

nozomi612016-09-18

著者の磯田道史さんは 古文書ハンターと呼ばれるほどの 古文書通の先生だ。その磯田先生が 金沢藩の猪山家の精巧で膨大な「家計簿」を手に入れたことからこの本が生まれた。幕末から明治にかけて 親子3代にわたって 藩の「財務課」のような部署で勤めた家族の 自宅での生活の家計簿だ。映画化もされた。

幕末の武士が いかに困窮していたかが分かる。映画にも出てきたが、猪山家では娘の 「髪置き祝い」に必要な鯛を買うお金を節約するために 鯛を絵に描いて出したとある。いくらお金がかかっても 武士は 親戚との縁を大切にしないと 生活できない構造になっていたので、冠婚葬祭そのものを取りやめることは難しかったそうだ。

徳川幕府が倒れ、明治となった世でも 猪山家は 会計の技術を買われておおいに出世した。その他の武士の多くは プライドはあっても仕事もなく相当な苦労を強いられたようだ。

磯田氏は 猪山家の人々を見て 「今いる組織の外に出ても 必要とされる技術や能力をもっているか」が 人の死活を分ける、と書いている。

先生は、古文書から 一家の歴史を再現し、それを未来への教訓として現代の人々に伝えてくれた。未来に活かせる歴史研究とはすばらしい。!
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